2021-22ニセコの冬まとめ
12月下旬から2月中旬にかけて上空に強い寒気が入る日が多く、この時期だけ見ると気温も低く、降雪量も多くなった。このため、積雪は12月下旬から3月まで平年より多い状態が続いたものの、シーズンを通してみると気温は概ね高めに経過し、降雪量も平年よりやや少なかった。
はじめに
ニセコの2021~22冬シーズンはコロナ禍の影響が続き、海外からのお客さんは0、国内のお客さんは前年に比べればやや増えたもののコロナ前の賑わいにははるかに及ばない状態が続いた。一方、雪は前シーズンに引き続き、2021~22シーズンも生活実感としては多い年となった。以下、詳しくデータを検証してみたい。
樺山観測所の積雪・降雪推移
この図はひらふスキー場に近い倶知安町樺山の自宅の庭で測っている積雪と降雪のデータ。棒グラフは2022年の日々の降雪量、折れ線グラフが今シーズンと過去4年分の積雪推移、Ave.として示している線はここで観測した14シーズン(2007年~2021年、ただし2009年は欠測)分の平均値である。
2021~22シーズンは11月下旬からまとまった降雪となる日が続き、12月前半は雪の降らない時期があったものの、2月にかけてまとまった降雪となる日が多かった。積雪の推移は降り始めの時期こそ前年(2021年)とはやや異なるが、12月下旬以降はほぼ前年をなぞるような推移となっており、14シーズン平均より積雪の多い状態が3月にかけて続いた。3月は前年同様、降雪は少なかったものの、3月下旬にまとまった降雪があった影響で雪解けが遅れ、前年より4日遅い4月22日に積雪 0cmとなった。
倶知安の積雪・降雪推移
この図(3種)は札幌管区気象台のホームページから閲覧できる倶知安の日降雪量、日最深積雪、累積降雪量のグラフである。平年値は1991年から2020年までの平均値で、前年までの平年値(1981~2010年)とは異なっている。特に累積降雪量は違いが大きいので注意が必要(後述)。
図の中段、日最深積雪のグラフから、今季は昨季とほぼ同じように平年より積雪の多い状態が続いたことがわかる。図の下段、累積降雪量を見ると今季は昨季に比べてやや少なく、2月中旬から3月中旬にかけて降雪が少なかったことで、その差が開いている。
旬別の気温・降雪
この表は旬別に倶知安の最高気温、降雪量と札幌上空の気温を平年との比較で示したものである。850hPaはおよそ上空1,300m付近となり、概ねアンヌプリ山頂くらいの高さの気温。500hPaはおよそ上空5,200m付近となり、冬の雪雲の雲頂くらいの高さの気温である。右側の列には平年差を示していて、平年より高い期間は赤で、低い期間は青で塗りつぶしている(ただし、降雪量は少ないとき赤、多いとき青)。
表の下に記した値は12月~2月(DJF)の平均、11月~3月(NDJFM)の平均、11月~4月(Total)の平均(降雪量は期間合計)で、これを見ると12月から2月にかけて上空(500hPa)の気温は平年より低く、降雪が多くなっているものの、冬を通してみると地上気温や上空(850hPa)の気温は平年より高く、降雪量は少なかったことがわかる。
12月下旬から2月にかけて上空(500hPa)に強い寒気が入ること多く、真冬の時期にまとまった降雪となって、積雪の多い状態が続いた。このことが、生活実感として雪が多く、厳しい寒さの冬だったと感じる要因であろう。
3月以降は上空(500hPa)に強い寒気が入ることも少なく、地上の気温も平年より高くなって春の訪れは順調だったことがわかる。
おまけ1
近年の傾向として、極端な天候が現れやすくなっている。この冬、2021年12月26日21時には、札幌の高層気象観測の500hPaで -46.1℃を記録し、12月の極値を更新した。札幌の500hPaの気温としては、これがシーズン最低値となっており、冬の初めにいきなり強烈な寒波に見舞われた冬であった。
おまけ2
この図は倶知安の地上観測値(平均気温、最深積雪、降雪の深さ)の新平年値(折れ線、左軸)及び前平年値との差(棒グラフ、右軸)である。単位は気温は℃、積雪・降雪はcm。
興味深いのは、降雪の深さはほぼ一貫して新平年値の方が少なくなっているのに対して、最深積雪や平均気温については必ずしもそうではないこと。
平均気温は概ね高くなっているものの、12月上旬は低くなっており、最深積雪は12月から1月下旬にかけて新平年値の方が多くなっている。あくまで想像の域を出ない考察だが、近年の温暖化の影響で冬の初めは海面水温が高いため、大気下層の気温が高く、上空に寒気が入った時の降水量が多くなることで積雪量が多くなっているのではないだろうか。これだと、降雪の深さの平年値は多くなっていないことと矛盾するようにも思えるが、「降雪の深さ」は毎時の積雪深差がプラスの時の値を合計しているので、雪質や雪面の状態が影響して、降雪時の積雪の沈みこみ量が数十年前より多くなり、降雪量を正確にとらえられていないのではないかと考えれる。